脳内色彩感覚

輪切りの中身。なるべく毎日書くつもり

イワンイリイチの死、クロイツェルンソナタ

を読んだ。

自分がびっくりしたのは

①1880年代に書かれたものなのに全然古くさくない

②ストーリーに意外性が全く無い

という2つ。

①は多分人の死っていう人類普遍のテーマを扱ってるからかな。

それより②がすごいなあと。あっと驚くどんでん返しが用意されていないのに、話にどんどん引き込まれた。

この本はイワンイリイチさんの葬式から始まるんだけど(まあここは正直ちょっとびっくりしたけど奇抜な展開はここだけ。)

ここでの葬式特有の雰囲気を上手いこと表現してる文章に惚れてどんどん読みたくなっていった。

だけど本当に面白かったのはその後の部分だった。つまりイリイチさんがどういう人生を送って、どうやって死んだのかという部分。

家族や親友の心理だってこんなに深くは分からないぞ、と思うくらい丁寧かつリアルに人間の内面を書き連ねてあった。

イリイチさんは男友達とは夜な夜なギャンブルなんかやっちゃう人。だけど女性にはかなりモテる。優雅で、なんというかどんなことも品良く笑い飛ばすジョークの種として扱う事が出来る。仕事だってとても出来る人だ。判事として人々の人生にとって重大な事をバシッと決めていく。

仕事も私生活も、非のつけどころがないしイリイチさん自身そういう人生をとても気に入っていた。

そのままどんどん出世して、綺麗で家柄も良い妻と、全ての人に祝福されながら結婚、そして子供が出来る。

この辺まで本当にテンポよくトントン進んだ。(正直ちょっと嫉妬するくらいテンポ良かった)だけどそこから、ほんの少しずつだけど人生に綻びが出来始める。最初は色々ある彼の居場所のうち1つで起きた事なんだけど、少しずつ全体を侵食していく。

まず奥さんと頻繁に喧嘩する様になる。確か子供が生まれた後奥さんが怒りっぽくなったとかそんなん。イリイチさんも気弱な方じゃないのでどんどんやり合う。一度や二度ではなく、何度も繰り返すうちに決定的に対立するようになってくる。時には二人の子供を巻き込んで派閥争いの様な状況にまで発展する。

(「誰も口にしないだけ同じ様な問題は9割以上の家庭で起こっている」という言葉がもうなんかとても切なくなる。)

その辺りからお金も何故か不足していくようになってくる。確か子供関係だったとおもう。

そしてどんどん疲れていく様子が居た堪れなかった。この辺は是非本編で確認してもらいたい(自分の文章力では届かない)。

そんで他人からの目が以前と違って見える様になる。(お前はもう終わった人間だ、早くそのポストを俺らに明渡せ、という様な風に)

そんなハズないと思いながらその可能性を頭から捨てきれない。

それまで楽しくて仕方なかった悪友達とのギャンブルもなんか以前より熱中出来なくなる。

その後も奥さんが実家帰ったり奥さんの姉にブチ切れられたり本当に散々な目に合うイリイチさん。

だけど、一回転機が訪れる。仕事での昇進だ。なんか色々報われたここが人生凪の瞬間。引っ越さなきゃいけなくなったけど家族は新しい家を気に入ってくれる。妻と何年ぶりかわからない位に穏やかに話し合う事が出来た。この辺はホッとした。読んでてそろそろ他人事に思えなくなって来てたから。

だけどそもそもこれは彼が死に向かう話。このタイミングで彼は肺に病を患う。

多分全体の2/3くらいはここからの闘病の描写に使われていた。

それからは一切救いない生き地獄。「死は誰にでも訪れるもの、但し自分を除いて」という考えだった彼にとって病は晴天の霹靂で、その後ひたすら苦しむ。もっといい医者がいるハズだと何度も医者を変え、その度に治療法を変える。マイナスな考えが体にも悪だと知りながらそれをやめられない。

妻はイリイチさん自身の不摂生が全てを招いたと考え、徐々に心配しようとしなくなる。

(というか娘とそのボーイフレンドとの取り持ちに夢中)

どんどん孤独になり、心を許せる人間が居なくなる。

描くの辛くなって来たからもう辞めるけどその後ひたすら衰弱してイリイチさんは死ぬ。

死ぬって何やろ、結婚するってどういう事やろ、人生って…という1つ考えるだけでもかなり労力を使う内容をここまで考えてもいいのかという気持ちにさせられた。

癖になる内容だし世に未だに残ってる理由がよく分かる最高の一冊でした!

トルストイさんはその人生も小説みたいなのでwikiってみると面白いかもしれません。

んではまた次回。